話題をアゲハチョウに絞らず、色々な蝶や、その幼虫の食草などについて話をしながら、世界の人達と親睦を深めましょう。バルセロナ国際交流には日本文化に精通していたり、日本語を流暢に話す世界の人達が集っています。
せっかくですので、バルセロナ国際交流でよく耳にする言語で「蝶」はどういうのか見てみましょう。「蝶」と「蛾」を区別しない言語が多いです。( ) 内はスペイン語による言語名です。それが何語か分からない場合は、辞書を見るか、バルセロナ国際交流で聞いてください。
ラテン系言語 | ||
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mariposa (español) | papallona (catalán) | fluture (rumano) |
farfalla (italiano) | papillon (francés) | borboleta (portugués) |
ゲルマン系言語 | ||
butterfly (inglés) | fjäril (sueco) | Schmetterling (alemán) |
その他の言語 | ||
蝶 (japonés) | 蝴蝶 húdié (chino) | 나비 (coreano) |
तितली (hindi) | প্রজাপতি (bengali) | ผีเสื้อ (tailandés) |
ヨーロッパタイマイ Iphiclides podalirius
幼虫の主食: バラ科のスモモ属、サクラ属、ナシ属など
ヨーロッパ~中近東~中国西部にまで分布しますが、日本にはいません。バルセロナでも、グエル公園などでよく見かけます。陽当たりの良い草原が好きです。
スペイン語では podalirio (女性名詞) と呼ばれますが、chupaleche という俗称も持っています。カタルーニャ語では papallona zebrada ですが、xuclallet という俗称も持っています。
キアゲハ Papilio machaon
幼虫の主食: ニンジンやセリやパセリなどセリ科。人間には猛毒なドクゼリも食べます。セリ科の場合、葉だけでなく花もよく食べます。また、ミカン科の柑橘類やヘンルーダ (スペイン語:ruda) も食べることがあります。
ヨーロッパから日本を含む東アジアの温帯に分布しています。バルセロナでも、グエル公園などでよく見かけます。越冬する蛹は -190度以下でも耐えられるらしいので、高山やかなり寒い地域にも分布しています。日本のキアゲハはこれではなく、Papilio hippocrates だという意見もあります。
スペイン語では学名から macaón と呼ばれますが、カタルーニャ語では papallona reina と呼ばれます。
アゲハチョウ紹介ビデオ
バルセロナの日本語とスペイン語の交流会では、日本語やスペイン語で、色々なテーマの会話を楽しんでいます!
まずは YOU TUBE でチャンネル登録してください。そして、バルセロナの日本語とスペイン語の交流会で会いましょう!
スペインは日本人にとって、就労ビザを取得できて合法的に就労できれば、とても住みやすく、スペインに移住してもホームシックになることはないでしょう。でも、昆虫好きな日本人は、夏になるとヒグラシの鳴き声や、ノコギリクワガタやミヤマクワガタ、そしてアゲハチョウが懐かしくなるのではないでしょうか。だからと言って、ミカン科を食べる Papilio 属を連れてくるのは厳禁 (違法) です。そんなことをしたら、オレンジ畑などがとんでもない被害を被るバイオテロになってしまいます。
ナミアゲハ Papilio xuthus
幼虫の主食: 柑橘類やサンショウなどミカン科の多くを食べますが、コクサギやゲッキツなど、ミカン科の中にも食べないものがあります。マツカゼソウは通常好みませんが、食べることもあります。オーストラリアのボロニアはめったに食べませんが、ボロニアを食べて成虫まで育った記事がネット上で見つかります。
日本にいる人に最も親しまれているアゲハチョウでしょう。日本では北海道から南西諸島まで分布し、日本の外では、台湾や朝鮮半島や中国大陸など東アジア温帯に加え、最近ではサハリン南部にもいるそうです。ハワイにも進出して柑橘類の害虫とされています。都心の放置された空地でカラスザンショウの実生がよく見られますが、1m 程度の若い木の時はナミアゲハの幼虫がいますが、20m ぐらいまで育った高木の場合、モンキアゲハの幼虫が見つかります。高さの好みもアゲハチョウの種類によって異なるようです。
クロアゲハ Papilio protenor
幼虫の主食: ナミアゲハと同じですが、幼虫は半日影を好み、また、成長すると、柔らかい若い葉より、少し固い成長した葉を好む傾向があります。ナミアゲハとの競争を避けるためかもしれません。庭に植えられたエリオステモンもよく食べますが、エリオステモンでナミアゲハの幼虫を見つけたことはありません。
日本では本州以南に分布し、日本の外では、台湾、中国、ヒマラヤあたりにまで分布しています。都市近郊の住宅地の半日影の狭い庭に植えられたサンショウでも幼虫がよく見つかります。日当たりの良いところではナミアゲハがいます。
カラスアゲハ Papilio bianor
幼虫の主食: ミカン科の中でも、コクサギ、キハダ、サンショウ、カラスザンショウ、ミヤマシキミ、カラタチなど好み、ミカンやレモンなどの柑橘類はあまり好みではないようです。
北海道から九州まで分布しています。コクサギを特に好むので、市街地にはあまり多くないですが、住宅地に植えられたサンショウや、空地に育っているカラスザンショウなどでも幼虫が見つかります。オナガアゲハと好む生息地が似ています。
沖縄にはオキナワカラスアゲハ Papilio okinawensis がいます。以前はカラスアゲハの亜種とされていましたが、交配実験やミトコンドリアDNA解析の結果から別種として扱われています。カラスアゲハとオキナワカラスアゲハの交配実験でできた雑種は、オスには生殖能力があるのに、メスにはないらしいです。オキナワカラスアゲハはハマセンダンとカラスザンショウを好むようです。
ミヤマカラスアゲハ Papilio maackii
幼虫の主食: ミカン科の中でも、キハダ、カラスザンショウ、ハマセンダンなどしか通常は食べたがりません。
山地に多いキハダを好むので山地でよく見つかり「深山」の名前がありますが、それがあれば、住宅地でも見つかります。青緑色の光沢があり、黒い宝石と呼ぶ人もいるぐらい美しい蝶です。蝶の人気コンテストの類いの企画でほぼ確実に首位を占める蝶です。北海道から九州までと、中国大陸、台湾、朝鮮半島、サハリンなどに分布しています。
オナガアゲハ Papilio macilentus
幼虫の主食: ミカン科の多くを食べますが、特にコクサギ、カラスザンショウ、ミヤマシキミなどの野生種を好む傾向があります。
翅が引き延ばされたように細くスマートで、この翅形が毒を持つジャコウアゲハに非常に似ているため、擬態していると考えられています。北海道南西部から九州までと、朝鮮半島や中国に分布しています。
ナガサキアゲハ Papilio memnon
幼虫の主食: ミカン科の中でも柑橘類だけのようですが、ミヤマシキミを食べたという記事もあります。
江戸時代には九州以南に限られていた分布域は拡大していて、1940年代には山口県西部や高知県南部、1960年代には淡路島まで北上し、21世紀初頭には福井県や神奈川県西部の太平洋側での越冬が確認されています。さらに2007年には茨城県南西部で多数確認され、2009年には栃木県南部で急増し、さらに2009年には福島県いわき市でも幼虫、伊達市や名取市でも成虫が確認されています。こうした分布の変遷から、本種は温暖化の指標種として注目されています。静岡や神奈川などで放置されたミカン畑も北上できた要因とも言われています。
ナガサキアゲハという和名は、1820年代に日本へ来たシーボルトが、長崎でこのチョウを発見した、というのが名前の由来となっています。
モンキアゲハ Papilio helenus
幼虫の主食: ミカン科の多くを食べますが、特にカラスザンショウが好きです。
日本では最大級の蝶です。インドから東アジアまで分布しています。日本での北限は関東地方までと考えられていますが、2009年6月に仙台市の東北大学植物園で、春型と見られるモンキアゲハが初めて採取されたという報告もあります。高く育ったカラスザンショウの上の方でよく幼虫が見つかります。
シロオビアゲハ Papilio polytes
幼虫の主食: ミカン科を食べますが、沖縄ではシークワサー、サルカケミカン、ハマセンダンが好まれています。
インドから東南アジアの熱帯域に広く分布していて、北限は奄美諸島です。沖縄では普通に見られる蝶です。八重山諸島では通年、奄美群島では2月中旬から11月下旬まで見られます。年に5~6回発生する多化性です。
ここまでの日本のアゲハチョウの幼虫は、ミカン科植物の葉を食べて育ちます。ミカン科植物は、一般に知られている柑橘類やサンショウや、四川料理に使われる花椒 (huājiāo) だけでなく、色々な木本と草本があります。花が美しい種類も多いので、花屋で見かけるものもあります。キアゲハだけはセリ科を食べますが、ミカン科植物を食べることもあります。
ここからは、幼虫がミカン科以外の植物を食べるアゲハチョウを見てみましょう。
ジャコウアゲハ Byasa alcinous
幼虫の主食: ウマノスズクサ科のウマノスズクサ亜科。ギフチョウが食べるカンアオイ亜科は食べません。
日本では、秋田県以南から八重山諸島まで、日本の外では東アジア (台湾、中国東部、朝鮮半島など) に分布しています。ウマノスズクサやオオバウマノスズクサを食べるために、生息地は局地的な傾向があります。また、ウマノスズクサの茎まで食べることもあり、その場合、そこから上は枯れてしまいます。個体数が多いと全滅するので、アゲハチョウの幼虫の中では珍しく、餌がなくなると共食いすることもあるそうです。
ウマノスズクサ類は、毒性のあるアリストロキア酸を含んでいて、幼虫時代にその葉を食べることによって、体内に毒を蓄積します。この毒は一生を通して体内に残り、ジャコウアゲハを食べた捕食者は中毒をおこし、遂には捕食したものを殆ど吐き出してしまうそうです。一度ジャコウアゲハを捕食して中毒を経験した捕食者は、ジャコウアゲハを捕食しなくなります。ですので、ジャコウアゲハに擬態した昆虫もいます。アゲハモドキという蛾はその例です。
ベニモンアゲハ Pachliopta aristolochiae
幼虫の主食: ウマノスズクサ科のコウシュンウマノスズクサ(宮古島)、リュウキュウウマノスズクサ(八重山列島)
インドから東南アジアにかけての熱帯域に生息していて、日本にはいませんでした。南方からきた迷蝶として八重山諸島で時々記録されていただけですが、1968年頃から土着し始め、1972年頃には宮古諸島、20世紀末に沖縄本島、21世紀初頭の時点では奄美群島まで分布を広げています。これは地球温暖化の影響とも言われています。飼育する場合はウマノスズクサも食べますが、途中で餌を変えられるのが嫌いで、食べずに死ぬこともあります。
アオスジアゲハ Graphium sarpedon
幼虫の主食: クスノキ科 (クスノキ・タブノキ・シロダモ・ニッケイ・ヤブニッケイなど)、しかし、ゲッケイジュでは育たないことが多いようです。
オーストラリア北部から東南アジア、東アジアまで分布し、日本での北限は仙台あたりでしょう。クスノキは台湾、中国、ベトナムの暖地の植物ですが、日本では神社でよく利用され、街路樹などにもなっているので、この蝶も人里に住んでいます。東京都心でも、靖国神社などでよく見かけます。伊豆半島などではタブノキやヤブニッケイが多い林に多いです。
過去にバラ科のサクラを食べている幼虫が目撃されたこともあるそうです。属は異なりますが、「アオスジアゲハ族」のヨーロッパタイマイ (Iphiclides podalirius) はバラ科のサクラ属などを食べるので、何かしら遺伝的関係があるのかもしれません。
ミカドアゲハ Graphium doson
幼虫の主食: モクレン科のオガタマノキやタイザンボク
東南アジアから日本の紀伊半島あたりまで分布しています。オガタマノキは神社に植えられていることが多いので、神社周辺に生息していることが多いです。伊勢神宮あたりが北限でしょう。
上記の他のアゲハチョウ科では、日本には、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ウスバシロチョウ、北海道の大雪山系・十勝岳連峰の標高1700m以上の高山帯にしかいないウスバキチョウ、韓国から人為的に持ち込まれた可能性があるホソオチョウがいます。また、スペインには、アポロチョウがいます。アポロチョウの名前は太陽神アポローンに由来し、ヨーロッパから中国の天山山脈まで分布しています。アポロチョウの学名は Parnassius apollo で、スペイン語名は la apolo です。ギリシャ神話のアポロはスペイン語で Apolo で男性名詞ですが、アポロチョウのことを言う時は女性名詞です!
ほぼ毎週、水曜日と金曜日にバルセロナに集まっていますので、気軽に立ち寄ってください。
Miércoles, 20:30 – 22:50
Viena Calle Pelayo (Pelai 16)
Metro:Universitat (L1, L2)
Viernes, 21:15 – 23:30
Alex Bar Restaurant (Còrsega 170)
Metro:Hospital Clinic (L5)
バルセロナの言語交換
バルセロナの言語交流を紹介するショート・ビデオです。数本連続しています。ちょっと観てもらえたらありがたいです。
スペイン語やカタルーニャ語を学んだり練習したり、また日本語を教えたりするだけでなく、世界の人々と出会うことができます。
ヨーロッパタイマイやキアゲハに出会えるグエル公園の裏山
アゲハチョウ科でミカン科を食草とするのは、もっぱら Papilio 属です。でも、スペインにいる Papilio 属は、セリ科を主食とするキアゲハだけです。キアゲハはミカン科を食べることもありますが。
スペインには、ミカン科の属であるか、またはミカン科とは別の科であるべきか意見が分かれるクネオルム (Cneorum)という植物があります。上の2つの写真がそれです。左 (スマホでは上) がスペインやフランスなど大陸にある Cneorum tricoccon、右 (スマホでは下) は、カナリア諸島にある Cneorum pulverulentum です。ミカン科を主食とするアゲハチョウの分布と、その植物の分布が一致していないので、ミカン科を主食とする Papilio 属は食べるかどうか分かりません。クネオルム (Cneorum) をもし日本に植えたら、ミカン科を主食とする Papilio 属のどれかが食べるかどうか、とても興味深いところです。
Cneorum tricoccon はスペイン語では la olivilla、カタルーニャ語では l'olivella と呼ばれますが、他の植物を指すこともあるようですので、検索は学名の方がいいでしょう。
自然に興味がある人、自然が好きな人は、つまり地球が好きなのでしょう。地球は太陽系第三惑星ですが、世界の人達が集まって国際交流をしているバルセロナでは、近い将来、他の惑星人との交流も始まるかもしれません。地球上の国際交流だけでなく、惑星間交流の準備も始めましょう!
でも、他の惑星人には、まず地球上の何語で話しかけたらいいのでしょうか。バルセロナ国際交流で親しんでいる下記の言語で話しかけてみたらどうでしょう。